Web会議の基礎知識
更新日:2020.10/23(金)
Web会議と似た機能を持ち、よく比較されるテレビ会議(ビデオ会議)ですが、両者には、具体的にどのような違いがあるのか、また、自社にはどちらが合っているのかということを、しっかりと把握されているご担当者様は多くないのではないでしょうか。
そこで、Web会議と混同してしまいがちなテレビ会議(ビデオ会議)について、日本テレワーク協会 客員研究員・鈴木達郎氏に徹底解説していただきます。
テレビ会議システムの特徴やメリット・デメリットはもちろん、導入目的やどんな企業に向いているかという点も合わせてご紹介しますので、ぜひ、製品選びの参考にしてみてください。
目次
テレビ会議とは専用回線を利用し、遠隔地と会議を行うシステムの総称です。一般的には専用のハードウェアとディスプレイ、マイク、スピーカーなどの機器を用意した、据え置き型の会議システムを指します。
テレビ会議は、ビデオ電話から発展したサービスです。電話に映像を付けたビデオ電話という技術が生まれ、それを会議に応用しようとしたところからテレビ会議は出発しました。
一方でWeb会議は、インターネットの発達により生まれたサービスです。通信費が高く、また高額な設備投資が必要だったテレビ会議を、より安く、より使いやすくするという流れから発達し普及していきました。
このような誕生背景の違いから、テレビ会議は、会議システムのハイエンドな形を表現して使われることが多く、Web会議というとミドルクラスのサービスを指す場合が多いです。
Web会議 | テレビ会議(ビデオ会議) | |
---|---|---|
会議形態 | 個人と個人 | 空間と空間 |
コーデック※の種類 | ソフトウェア | ハードウェア |
価格・料金 | 低め | 高め |
設備 | 個々のデバイスのみ | マイク・スピーカー・ディスプレイ等 |
メンテナンス | 随時バーションアップ | 機器のメンテナンス費が必要 |
※コーデック…情報入力するエンコードと情報出力するデコードを行う機器
この表は、Web会議システムとテレビ会議システムの特徴を一覧にしたもの。2つの製品比較からわかる、テレビ会議システムの特徴を詳しく解説していきましょう。
テレビ会議は「ハードウェアコーデック」を使用しています。このハードウェアコーデックは、ソフトウェアコーデックに比べ処理能力に優れているという特徴を持っています。そのため、テレビ会議は、Web会議と比較して、映像や音声が高品質で安定しています。
Web会議はデバイスとデバイス、個人と個人を繋ぎます。一方でテレビ会議は、空間と空間を繋ぐのが特徴です。会議スペースと会議スペースを繋ぐため、テレビ会議では多人数同士での会議が可能です。
テレビ会議は自社にハードウェアを設置するオンプレミス型が一般的です。また設備も準備する必要があります。多人数で不自由なく、会議を行うにはしっかりとした音響設備や解像度の高いディスプレイが不可欠。例えば、エコーキャンセラーやハウリングを防ぐといった観点で、設備を考える必要があります。
Web会議と比較して、テレビ会議はどのような点が優れているのでしょうか? テレビ会議のメリットを4つご紹介します。
空間を繋ぐテレビ会議は、多人数・多拠点での会議に強みを持っています。自社で使いたい人数や拠点数を基にシステムをデザインすることで、多人数・多拠点であっても画質、音質を気にせず会議をすることができます。
Web会議に比べ、テレビ会議は臨場感に優れています。スピーカーやマイクにこだわることで、実際に対面しているかのような会議空間を作ることも可能です。このように迫力ある会議システムを構築することができるのも、テレビ会議が持つメリットといえるでしょう。
テレビ会議は、専用回線による安定した帯域を確保することができ、高品質な会議環境を実現できます。映像の遅延や通信不調によって、その都度会議が中断される心配も減るため、ストレスのない会議進行が期待できます。
テレビ会議は専用回線を使用するため、機密性やセキュリティ面に優れています。そのため、社外秘の情報が関係する会議・打ち合わせに、テレビ会議は適しています。会議システムにおいて、集中管理をしない場合は、基本的にセキュリティ面に問題を抱えているといわれています。一般的に、テレビ会議は、センターを設け集中管理をするので、相対的にセキュリティがしっかりしているといえます。
一方で、テレビ会議を導入する際の注意点もあります。デメリットもしっかりと理解し、導入するかどうかを検討していきましょう。
値段はサービス会社によって変わるため一概にいうことはできませんが、一般的にテレビ会議の方がWeb会議に比べて費用がかさみます。テレビ会議は設備投資に加えて、メンテナンス費用、専用回線費用といったランニングコストも高くついてしまうためです。テレビ会議を導入する場合は、Web会議より多額の費用がかかることを念頭に置く必要があります。
テレビ会議は独自に設計したハードウェアを使用するため、基本性能を越える拡張は難しく、汎用性にかけます。後から必要に応じて性能を変更していくことも可能ですが、ハードウェアの場合は自動的にアップデートするわけにはいきません。そのためソフトウェアを使用したWeb会議に比べると手間がかかるので注意が必要です。
テレビ会議の参加人数は設備の質に左右されます。具体的には、マイクが音を拾う限界やスピーカーによっては多人数が一度に話すと聞き取りづらいといった、技術的な問題が挙げられます。そのため途中から参加可能人数を増やしたいと思っても、すぐに対応するのは難しいので注意しましょう。導入する前に、「どれだけの人数でテレビ会議を使用するのか?」という想定を行いましょう。
ここまでメリット・デメリットをみてきましたが、具体的にテレビ会議はどのような目的で導入されているのでしょうか。シチュエーション別に、3つの導入目的をご紹介します。
テレビ会議の導入目的として海外拠点との連携が挙げられます。テレビ会議は、専用回線によって遠隔地を繋ぐため、安定した帯域を保証、海外であってもスムーズに会議を行うことができます。
重役会議や幹部会といった機密性の高い内容を扱う場合に、よくテレビ会議は使われます。セキュリティ面が優れているだけでなく、高品質で安定した環境で会議を行えるからです。また会議をするために作られた空間であるため、自席やオフィスではためらわれる内容などもテレビ会議には適しています。
定例会や講演など、比較的規模が大きい場合にもテレビ会議はよく使用されます。「多人数・他拠点に対応可能」という強みを活かした利用方法といえるでしょう。このように大規模な会議・打ち合わせにはテレビ会議を使うのがおすすめです。
テレビ会議は、災害時のコミュニケーションインフラとしても役立ちます。専用回線を使っているため、電話やインターネット回線の混雑による影響を受けないからです。
特に、各地に多数の拠点を持っている企業や、本社から離れた場所に主要製品の工場を持っている企業などは、いち早く現場の状況を把握し、速やかな意思決定を行う必要があるため、非常時のコミュニケーションインフラの確保は、BCPの中でも最重要事項となります。テレビ会議システムを導入されるのであれば、非常時には、テレビ会議を起動するというルールを設定し、会議室をそのまま対策本部にしてしまうなど、BCPへの活用もご検討ください。
ここまでお伝えしてきた内容を踏まえた上で、Web会議システムよりもテレビ会議システムの方が向いているのは、以下のような企業と言えます。
官公庁や銀行、保険会社など、機密情報を多数取り扱う企業には、セキュアな通信環境が求められるため、専用回線を使うテレビ会議が向いています。
支社長や子会社の社長、役員クラスの会議が多数開催されるような企業には、品質の高い会議が行える、テレビ会議システムが向いています。また、大きな企業であれば、その分社員数も多いでしょう。テレビ会議システムがあれば、全拠点で一斉に研修などを行うこともできます。
海外に支店や工場を持つ企業は、専用回線によって安定してスムーズな会議が行える、テレビ会議が向いています。もしも、社員が定期的に海外の拠点に出張をしているのであれば、その出張費とテレビ会議にかかる費用を比較してみてください。海外出張の回数によっては、テレビ会議の導入によって、大幅にコストを削減できる可能性があります。
テレビ会議は、一般的に品質や安定性が高く、重役会議や遠隔地との定例会議に適した会議システムです。もし導入すれば中断に悩まされることなく、スムーズに会議を行うことができるでしょう。
しかし、テレビ会議はその分費用も高くなってしまいがち。それに加え、導入した装置の性能を超えるような使用はできず、汎用性にもかけるので注意が必要です。
実は、インターネットが普及した昨今では、Web会議であっても安定した通信を行うこともでき、品質は向上しています。オンプレミス型のWeb会議など、中には、テレビ会議に引けを取らない高品質なサービスも。もし導入に迷ったら、まずはWeb会議を使ってみて、どのような会議システムが自社に適しているのかを検討するのもいいかもしれません。
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