Web会議の基礎知識
更新日:2022.08/01(月)
2020年3月23日(月)に、東京都の小池百合子知事が記者会見を開き、新型コロナウイルス感染症に対する東京都の今後の対応方針について発言をしました。
その中で、「事態の今後の推移によりましては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります。」との言葉があり、ワイドショーは、もし東京でロックダウンが実施されたらなんて話題で盛り上がっています。
東京都のウェブサイトによると、1日あたりのと東京への流入人数は約290万6000人とのこと。この人数を考えると、首都封鎖は現実問題無理なのでは…?と思いつつも、実際、海外では、外出禁止、移動禁止、入国禁止などの措置を取っている国や都市が増えてきています。
世界の状況を考えると、むしろ、現時点で、ほとんどいつもと変わらない生活を送っている日本の方が異常なのかも。
さて、もしもロックダウンが実施されたら、首都圏の一般企業はもう休業かテレワークしか選択肢がなくなるわけですが、普段からテレワークができる、あるいは、BCP対策としていつでもテレワークができる環境が整っているという企業は、一体どのくらいあるのでしょうか?
もうそろそろ、いつでもテレワークに切り替えられる環境の整備を始めておかないとまずいかも…。
これからテレワーク制度の導入を検討する、あるいは、導入はしたいけどまだ進められていないという企業の参考になればと、とある企業で、実際に新型コロナウイルス感染症対策として、テレワークのテスト運用を行った際のレポートを3回に分けてお届けしていこうと思います。
今回は、テレワークのテスト運用実施前の準備編です。
目次
社名は控えさせていただき、仮にZ社とさせていただきます。
Z社は、東京都内の主要駅にオフィスを構える、Webマーケティング企業です。主な事業は、Webサイトの改善提案や制作、広告運用など。社員数はざっくり150名程度です。
事業内容から考えると、割と簡単にテレワークを導入できそうな印象を受けますが、上層部がなかなか首を縦に振らないというあるあるな事情で、これまでテレワークの導入には至らなかったとのこと。
往訪と往訪の間に、カフェなどでリモートワークをするのも、公式的にはNG。課によっては、短時間であればOKなど、課長の裁量による一部許可に止まっているそうです。
さて、そんなテレワークに否定的な会社が、どうして在宅勤務のテストを行うことになったのかというと、これは今の時期であればどこの会社も同じ理由だと思いますが、万が一、自社の社員の中に新型コロナウイルスの感染者が出てしまった場合、あるいは、同じビルに入居している他の会社やテナントで感染者が出てしまった場合に、オフィスが閉鎖されても事業を継続できるようにする方法を確立するためです。働き方改革や福利厚生としてではなく、あくまで、BCP対策の一環とのこと。
では、具体的にどのようなテレワークテストを行ったのでしょうか。
まず、テレワーク実施期間は、2020年3月のとある月曜日~金曜日までの5日間。テレワーク実施者は、そのうちの3日間でテレワークを実施します。
テレワーク実施者は合計10名です。
内訳としては、営業マンが1名、Webマーケティングのコンサルタントが3名、Webデザイナーが1名、広告運用者が3名、情報システム担当者が2名が選抜されました。
また、追加で、ちょうど実施期間中に、37.0℃以上の発熱から解熱した社員が、リモートワークを行いました。
この項目だけは、ほとんどが社員たちの憶測になることをお許しください。
実は、テレワークのテスト利用が発表されたとき、Z社もついにリモートワークをやるのかという点でも社員たちはざわついたのですが、それと同じくらい、選抜メンバーについてもざわつきました。何故、このメンバーなのかと。
社員の間では、それくらい不思議な人選だったのですが、探っていくと、どうやら、今回のテレワークテストの選抜メンバーは、いくつかの条件に当てはまる人が選ばれたようなのです。
1つ目は、他の社員との連携が必要な人。これは、営業マンやコンサルタント、Webデザイナーが当てはまります。
2つ目は、家族と同居している人、特に小さい子供がいる人です。
3つ目は、入社してからの期間が短い人。2019年度の新入社員や、中途で入社後3ヶ月程度の人が選ばれていました。
4つ目は、この基準は賛否ありそうですが、残業時間が社内平均より短い、または、体調不良による欠勤が多い人と言われています。
2019年度は、Z社にとって平均的に残業が多い1年でした。事業の拡大や、大型案件の受注などで、残業時間の上限ギリギリを攻めながらも、大きな成果を残した人もいれば、逆に、ほとんど残業をせず、特段目立った成果も残さなかったという人も。
今回の選抜メンバーには、後者と思われるひとばかりが選ばれたため、テレワークにした結果サボらないかどうか、要は、会社への忠誠心を試すために、4つ目の条件を設定したのではないかと言われているのです。
それを裏付けるかのように、今回のテレワークテストでは、明らかに自宅でも仕事ができる職種の人、それから、テレワークでも絶対にサボらない人、これはつまり、仮にテレワークにしたことでゆるく仕事をしたとしても、納品期日厳守、目標達成を必ずするとわかっている人は、対象になりませんでした。
先ほどもご紹介したように、会社の上層部がテレワークに否定的なので、テレワークに移行するための準備は、これまで一切行われていません。そのため、Z社がテレワークを行うには、様々な課題がありました。
まず、最も大きな課題が、モバイル端末の普及率です。Z社では、社員全体に対して、ノートパソコン、あるいは、スマホを会社から支給されている人が50%程度しかいません。
また、セキュリティのルール上、個人のパソコンは会社への持ち込みすらNGで、業務使用の許可という制度自体がありません。つまり、今のルールのまま、テレワークに移行するには、残りの50%の社員にノートパソコンを支給する必要があります。
もう1つの課題は、社内ネットワークへのアクセスです。
在宅勤務どころか、カフェなどでの業務も原則禁止のため、データは全て社内ネットワーク内に保存されており、また、自社のシステムも、ほとんどが社内ネットワークからのアクセスのみを許可している状態。
そのため、テレワークに移行するには、自宅からでも社内ネットワークにアクセスできる環境を構築する必要がありました。
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今回のテレワークテストにあたり、まずは、最大の課題であった、モバイル端末を用意する必要があります。
選抜メンバー10名のうち、ノートパソコンもスマートフォンも支給されていないのは2名のみだったので、この点は、会社にあった在庫でクリアできたよう。
また、社内ネットワークに接続するために、それぞれのノートパソコンにVPN接続の設定を行いました。
そのほかに用意したものといえば、自宅でノートパソコンをテレビやモニターに繋ぎたい人には、HDMIケーブルを支給したくらい。
出社メンバーとの連絡には、もともと導入しているChatworkやGoogle Meet(G Suite利用中)、あるいは、社用のスマートフォンからオフィスに電話をするので、新規に支給したものは特にありませんでした。
テレワークテストのために、新しく作られたルールは、たった2つのみ。
1つ目は、休憩時間を除く業務時間中は、常に上長とGoogle Meetを接続しておくこと(映像のみ)。お手洗いレベルの離席は報告不要だが、客先訪問で外出をする場合、また、家族と同居をしている人に限り、必要な家事などで長時間離席する場合は、その旨を事前に上長へ報告する。
2つ目は、業務開始時に、1日の予定業務を上長へ報告、また、業務終了時にも、1日の完了業務を上長へ報告すること。
以上です。意外と少ないですよね。
また、新設したわけではないですが、テレワークで念押しされたルールが2つ。
1つ目は、客先訪問で外出する際の、カフェなどでの業務は引き続き禁止。
2つ目は、Free Wi-Fiへの接続禁止。自宅で定額制のインターネット回線を契約している場合はそれを利用し、それ以外の場合は、支給しているスマートフォンのテザリングを使用します。
あとは、テレワークテスト期間中に、業務に支障が出るレベルの問題が発生した場合はすぐに対応を行いますが、緊急性の低い場合は、専用のGoogleスプレッドシートで問題を共有し、テレワークのルール整備に役立てます。
準備編はここまで!
テレワーク導入準備0の状態でも、"やる"とさえ決めれば、たったこれだけの準備ですぐにテストを行うことができます。
おそらく最も大変なのが、人員の選定と端末の準備。しかし、たった数日、たった数人レベルならどんな企業でもそれなりにすぐ対応できるのではないでしょうか? 人員選びの際は、テレワークに適さなそうな人を選ぶのが重要です。明らかできる人を入れるのはあまり意味がありません。
また、チャットツールやWeb会議システムが無いという場合は、とりあえず無料のツールを使う、あるいは、今時期は新型コロナウイルス対策キャンペーンとして、一部サービスを無料提供している製品もあるので、そういったものを利用するのも一つの手段です。
テストを実施することで、初めて出てくる問題も多数ありますので、今後テレワークの体制を整備する上でも、とりあえずやるはとっても有効。
都知事からもテレワークをお願いされている今、とりあえずテストだけでもやってみませんか?
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