Web会議の基礎知識
更新日:2022.10/27(木)
自治体DX先進事例、取り組み方と結果について解説していきます。
現在、各自治体でDXの取組みが進んでいます。
しかしながら、世界中でデジタル化が進んでいる今、日本のデジタル競争力は他国に比べて高いとは言えない状況にあります。
この記事では、自治体DXを推進する動きを加速させる為に、参考にしていただきたい先進事例、取り組み方と結果をご紹介していきます。
目次
「自治体DX」を簡単に言うと、デジタルの力で住民の利便性や職員の働き方を向上させる試みです。
もっと詳しく自治体DXについて知りたい方はこちらを参照ください
自治体DXを推進する上で重要とされているのが「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」です。
ガバメントクラウドとは、政府が所有する膨大なデータを一元的に管理・運用するためのクラウドサービスの利用環境を指します。
地方自治体の情報システムにおいても、ガバメントクラウドを活用できるように、具体的な対応方策や課題などについて検討することが求められています。
下記は地方自治体においてガバメントクラウドが活用された場合のイメージ図です。
引用:地方自治体によるガバメントクラウドの活用について(案)P1
イメージとしては、まず複数のシステム開発事業者がガバメントクラウドに標準仕様のアプリケーションを構築します。
地方自治体はその中から選択したアプリケーションの基幹業務などをオンラインで利用可能です。
自治体がガバメントクラウドを活用することで、サーバー、OS、アプリを共同で利用することができるので、利便性だけではなくコスト削減も期待されています。
自治体DX推進計画においては、2021年1月~2026年3月までの期間が対象期間とされ「重点取組事項」として下記の6つが示されました。
それぞれについて解説します。
地方公共団体における業務プロセス・情報システムの標準化を推進することを目的として掲げられています。
2025年度を目標時期としており、上記で紹介した「ガバメントクラウド」の活用に向けた検討を踏まえ「住民記録」「地方税」「福祉」などの基幹系17業務システムについて国の示す標準仕様に準拠したシステムへの移行を目指しています。
これにより、自治体間で異なるシステムを運用していた従来の運用により生じていた人的コストが抑えられ、職員の負担軽減と住民サービスの向上が期待されています。
国はマイナンバーを、デジタル社会の基盤となるものと位置づけていることから、2022年度末までに、ほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指すものです。
マイナンバーカード取得者へマイナポイントを付与したり、市区町村へ事務経費を補助することで臨時交付窓口の設置や土日の開庁を推進したりすることで、マイナンバーカードの普及が促進されています。
住民がマイナンバーカードを用いて申請すると想定される31の手続きについて、マイナポータルからのオンライン手続きを可能にすることを目指すもの。
オンライン化により、マイナンバーカードがあれば、自宅にいながら「子育て」「介護」「被災者支援」「自動車保有」などに関する手続きが可能になり、住民の利便性の向上が期待されています。
2020年12月25日に閣議決定された「デジタル・ガバメント実行計画」によると、2040年頃に本格的な人口減少社会が訪れることを見据え、
AI=人工知能
RPA=ロボティックプロセスオートメーション
という、業務を効率化するツールを積極的に取り入れることで、自治体の業務を見直す取り組みを指すものです。
国は「AI・RPA導入ガイドブック」の策定も行っています。
「デジタル・ガバメント実行計画」では、テレワークを活用した柔軟な働き方についても言及されています。
テレワークは、近年の新型コロナウイルスの流行や、地震、台風、大雨、雪害といった非常時における業務継続の観点から必要とされています。
また、テレワークにより育児・介護といった生活に制約のある職員が、継続的に業務を行う環境を整えることができ、柔軟な働き方の実現が期待されています。
ただし、テレワークは個人情報漏洩などのリスクがあることから、セキュリティを確保をした上で導入するよう、2022年3月に「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改定が行われました。
「行政手続のオンライン化」「テレワーク」「クラウド化」など、新たな時代に対する行政の対応のため、セキュリティ対策の徹底の一環として「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」が改定されました。
このガイドラインを踏まえて、各自治体において適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、情報セキュリティ対策の徹底に取り組むことが求められています。
以上が自治体DX推進計画において重点取組事項6項目の詳細です。
以降の章では、実際に自治体においてDXが活用された具体例を紹介します。
デジタル技術の活用は、行政の業務の効率化が図られることによるサービスの向上や、近年の新型コロナウイルス対策における感染拡大防止の観点からも有効と考えられています。
デジタル技術を活用して業務改善した具体例として、神奈川県平塚市の事例を紹介します。
この事業のポイントは大きく下記の2点です。
・電子化による事務経費が1/3近く大幅減
・電子化により、消費者の行動がデータ化され、データ分析が容易に
事業の概要
平塚市では以前は紙媒体で実施していた「プレミアム商品券」にかかる事務について、2020年度に電子化。
これにより、事業規模が約8億円から約15億円と、およそ倍に増えたにもかかわらず、かかった事務経費は1億4,800万円から5,400万円に1/3近くも減少した。
さらに消費者の消費行動がデータ化されることにより、そのデータを基礎として分析が容易にできるようになり、今後の施策を考える上で有効な指標となった。
なお、販売金額は13,000円分のスターライトポイントを10,000円で販売されたので、プレミアム率は30%。
購入上限額は一人につき30,000円。
この事業の流れは下図のとおりです。
引用:自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】 P31より
この事業実施によるメリットは下記の4つがあげられました。
1.新型コロナウイルスの感染予防の観点からも、非接触決済である電子化が有効だった。
2.電子化したことで、取引データに基づき加盟店に自動的に振込が行われるようになり、換金手続きが不要となった。以前の紙の商品券は、使用済商品券を金融機関などの換金窓口へ持っていき、換金する必要があった。
3.電子化したことで、1円単位でポイントを利用できるようになり、利用者の利便性が向上。紙の商品券では、釣銭が出なかったため、会計時に「商品券+現金」という形での支払いがほとんどであった。
4.プレミアム商品券の利用には「ひらつか☆スターライトポイント」という専用のアプリが必要であるため、このアプリを通じて加盟店独自のクーポン券やお知らせを発行することができ、効果的な情報発信をすることにつながった。
この事業では、事業規模が拡大したにも関わらず、事務経費が減少したという点がデジタル化の大きなメリットです。
平塚市ではYouTubeで「ひらつかビジネスチャンネル」というチャンネルを開設しており、キャッシュレス化推進事業についても発信しています。
行政手続のオンライン化は、住民が市区町村に足を運ぶ必要があった手続きを、オンラインで完結させることで、住民の利便性を向上させることを目的とするものです。
またオンライン化によって紙の書類を無くすことにより、職員の事務負担の軽減も期待されています。
行政手続きをオンライン化した具体例として紹介するのは、千葉県船橋市の事例です。
この事業のポイントは大きく下記の2点です。
・アンケートなどの、入力が簡単な手続からオンライン化をスタート
・オンライン化の加速のため、各様式について押印の必要性について見直し
事業概要
ユーザーインターフェースに配慮したシステムを導入し、アンケート入力や講習の申し込みなどの簡単な内容からオンライン化を進めている。
このシステムは、庁内で使用することも可能なので、職員間の照会業務などにおいても活用することができる。
オンライン化の妨げとなる各種申請様式における押印について見直しを行った結果、押印が義務付けられていた5,513件の様式中、約70%に相当する3,843件について、押印の義務付けが廃止された。
船橋市がまとめているオンライン申請の概要と実績については以下の図のとおりです。
引用:自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】 P37より
行政手続オンライン化の大きな障害となる、様式からの押印廃止が大きな効果をもたらしていることが分かります。
下記は船橋市が押印の見直しについて示した方針です。
・押印義務付け廃止→認印・実印(印鑑照合なし)
・押印義務付け存続→実印(印鑑照合あり)
・国等の根拠によるもの→国等の法令改正に準じて、随時対応
多くの様式において押印義務付けの見直しをしたことで、様式全体の70%もの押印を廃止できたことが、オンライン化の推進につながっています。
船橋市ではホームページで「オンライン申請」ができる一覧を掲載しており、積極的にオンライン化を推進していることが伺えます。
引用:船橋市ホームページ
デジタルデバイドとは、インターネットの恩恵を受けることのできる人と、できない人の間に生じる「情報格差」を指す言葉です。
特に問題となるのは、高齢者などデジタルを多く使ってこなかった方が、行政の急激なデジタル化によって取り残されてしまうことです。
これを解決しようというのがデジタルデバイド対策です。
具体的な取組事例を2つ紹介します。
県が市町村から推薦を受けた候補者に対し無料講習を行い、高齢者を「高齢者デジタルサポーター」として育成し、デジタルに不慣れな高齢者に対し、同じ目線から操作方法などを説明するというものです。
サポーターは、市町村の依頼により、高齢者向けのデジタル研修の講師や相談員などの役割で派遣されます。
サポーターは、
・スマートフォンの基本操作
・高齢者が巻き込まれがちなトラブル
・マイナンバーカードの活用方法
などについて研修や相談対応を行うことになっています。
群馬県の3市町村によって共同で住民向けのスマホ・タブレット講座が実施されました。
群馬県情報化推進協議会の事業を活用して、講師の派遣を受けることにより事業が実施されています。
3市町村が合同で行うことで、開催に必要となる職員数も減らすことができ、単独開催と比べて職員の負担が軽減されています。
また、近隣市町村との連携が密になることで、職員間での情報共有を積極的に行う機会も増加したこともメリットの一つです。
デジタルデバイド対策として2つの事例を紹介しました。
高齢化が進む日本においては、高齢者がデジタルを使いこなせるかどうかが、今後の自治体DXの推進において重要な課題です。
上記のような取り組みが各地で進むことで、高齢者も行政のデジタル化に対応でき、自治体DXがより加速する要因となります。
今回は自治体DXを進める方法について、総務省が示した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の重点取組事項と、各自治体が取り組んでいる具体例を中心に解説しました。
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